住吉大社「本宮(本殿)」【国宝】

スポンサードリンク

住吉大社「本宮(本殿)」【国宝】

読み方

すみよしたいしゃ「ほんぐう(ほんでん)」

造立年

1623年(元和9年)

再建年

1810年(文化7年)

再建者

福岡藩主 黒田長政

建築様式(造り)

住吉造(すみよしづくり)

屋根の造り・素材

切妻造、檜皮葺(ひわだぶき):ヒノキの皮

国宝指定年月日

<1953年11月14日指定>

住吉大社・本宮(本殿)の歴史(由来)

毎年、正月3が日の初詣参拝客数が200万人を超え、全国約2300社余の住吉神社の総本宮である住吉大社。

地元の大阪の方には「すみよっさん」と親しみを込めて呼ばれ、古くから庶民の心を癒してきた存在です。

それというのも、住吉大社のご祭神は神道で最も大切とされる「祓(はらえ)」を司る神で、他にも、人々の生活に密接し、多方面にわたる願いを叶える神様がお祀りされているからです。

そんな住吉大社の中でも、最も重要な神様をお祀りするのが本殿です。

住吉大社の本殿は4つあり、その全てが住吉造と呼ばれる形式の建物です。

現在の本殿は1623年の福岡藩主であった黒田長政の再建によるものですが、その建立年代は日本の神社の中でも特に長い歴史を持つ神社の1つです。

この住吉造の形式は、組物(軒を支えるために柱の上部に組まれる構造物)を使用しておらず、仏教建築が渡来し影響を及ぼす以前からのものであるということで、我が国の古代建築の形式をそのまま伝えている証にもなっています。

また、この素晴らしい建造物を現代において見ることを可能にしている理由は、住吉大社社殿が古くから、伊勢神宮(三重県伊勢市)、香取神宮(千葉県香取市)、鹿島神宮(茨城県鹿嶋市)と並び、20年ごとに社殿を全て造り替えて大神を新宮にお遷しする、【式年遷宮】を行っているからです。

現代まで続くこの習わしがあったからこそ、今も美しい社殿を参拝することが出来るのです。

住吉大社・本宮(本殿)の建築様式・特徴・見どころ

本殿の建築様式は「住吉造」です。

住吉大社の境内の中でも、1番の特徴であり、見みどころといえるでしょう。

何故なら、住吉大社の建築様式は神社建築史上最古の様式の1つに数えられるため、4つある本殿すべてが国宝に指定されているほど価値のあるものだからです。

住吉大社の本宮(本殿)はその「住吉造」の代表的建築と言われ、類例も少ない珍しい建物です。

住吉造の他に神社建築様式として挙げられるのは、神明造、大社造、春日造、などがありますが、住吉造と同様に、それぞれの建築様式の数はどれもきわめて少なくなっています。

一般的に神社の本宮建築様式は、ある特定の神社に固有の形式であって、同じ祭神が他の場所に請されたときに、その本殿形式が再現される場合以外は、形式の伝播という現象はなかったことが、数の少ない理由ではないかと考えられています。

住吉造りとは

そんな貴重な「住吉造」とは、どのような神社本殿建築の形式なのでしょうか。

特徴的なのは屋根に反りがなく、切妻造りの妻を正面とし、内部が2室になっていることです。

また、正面に階段がつくだけで周囲に縁が巡らず、素朴な外観ですが、柱は朱塗り、壁は胡粉(ごふん)塗りの横板壁で色彩の対比が鮮やかなことも挙げられるでしょう。

住吉造

それでは、それぞれの特徴について、詳しくご説明します。

社殿の内部

前後2室に分かれていますが、入口が正面の中央にあり、正面のまん中には柱がなく、扉の両脇の柱があるので、見たところ3室のように見えます。

しかし、建物の裏正面は、柱間(はしらま)があり、ちゃんと2室になっているのです。

このことは、出雲大社に代表される大鳥造と同じですが、奥行きが大鳥造の倍である四間となっています。

住吉造
大鳥造

また、社殿を囲んだり繋いだりする回廊がないことや、社殿に縁がなく、玉垣で覆われていることなども特徴の1つです。

第三本宮と第四本宮の後ろ側。玉垣で囲まれているのがわかります。

出入り口

「妻入り」と呼ばれるこの出入り口は、屋根の面から見て横の壁に入り口を持つもののことを言います。この様式は出雲大社などにも見られます。

「妻入り」と並んでもう1つ、主な建築様式の1つとされるのが「平入り」です。

屋根の面から見て水平の壁に入り口を持つ様式です。「平入り」は伊勢神宮などに見られます。

屋根の造り(素材・形)

住吉造の社殿の屋根は、住吉大社の本殿のように、檜皮葺(ひわだぶき)という、檜の皮を敷き詰めて

少しずつ、ずらしながら重ねて屋根をふいたものや、同じような葺き方で茅を使った茅葺、柿を使った柿葺など、幅広い素材で作られています。

住吉造に限らず、神社建築では瓦を使っていないことが1番の特徴と言えますが、これは貴族の私邸では檜茅葺が多く使われていたことと、瓦の伝来当初は瓦葺きが最も格式の高い技法でしたが、平安時代以降は檜茅葺が屋根工法の中で最も格式の高い技法となったためと思われます。

形は、直線的な屋根で切妻造り(屋根が三角形状に頂上から地上に向かって2つの斜面を形成するもの)です。棟の両側に流れる2つの斜面は、書物を開いたかのようにも見えます。




屋根の飾りなど

屋根にも神社建築ならではの様式を確認することが出来ます。

千木・堅魚木

屋根には、切妻屋根の神社本殿に多く見られる千木(ちぎ)と堅魚木(かつおぎ)を持っています。

千木・堅魚木も屋根と同様に直線的です。この2つは、神社の格が高いことを示していて、神社本殿を象徴します。千木は「風木」という説が強く、風除けの意味が秘められているとみられ、構造的にも強風避けとして、風穴が開けられています。

千木の形には、2種類あり、先端が「外削ぎ」と言われる、地面に対して先端が垂直に削られているものと、「内削ぎ」と言われる、地面に対して先端が水平に削られているものがあります。

この「外削ぎ」と「内削ぎ」は御祭神の性別を表現しているとも言われており、御祭神が男神の社は外削ぎ、女神の時は内削ぎになっているという説があるため、外削ぎの千木は男性の神様を示すものとして「男千木(おちぎ)」、内削ぎの千木は女神を示すものとして「女千木(めちぎ)」とも呼称されます。

神社によっては、外削ぎの千木と内削ぎの千木が同じ社殿に両方ついている神社もありますが、住吉大社の場合には、住吉三神をお祀りする第一から第三本宮が外削ぎになっていて、神功皇后が御祭神である第四本宮が内削ぎです。

第二本宮「外削ぎ」の千木
第四本宮「内削ぎ」の千木

同様に、性別が表現されていると言われている飾りに堅魚木があります。

堅魚木は、千木と同じく棟木の上に、棟木に対して直角に並べた丸太(住吉大社の本殿は角材)のことで、茅葺の押さえとしての役目があります。

また、堅魚木は、「鰹木(勝男木)」とも書き、円柱形状の姿が、魚の鰹(かつお)に似ている形ということで、この名がついたとも言われています。

この堅魚木は、祀りされてる神様の性別によって本数が決められているとも言われていて、男性の神様が奇数、女性の神様が偶数となります。

しかしながら、住吉大社の場合は鰹木の数は4つの本宮ともに5本あります。お祀りされている神功皇后が男勝りであったからでしょうか?謎が残るところです。

懸魚

建築装飾の1つである懸魚(げぎょ)は、盾の形をしています。

神功皇后が三韓遠征(さんかんせいばつ)と言われる戦を勝利に導いたと伝えられることから、戦いのシンボルであった盾の形になったと言われていて、神功皇后を配祀する、福岡県にある住吉大社にも、同じ盾の形をした懸魚を確認することが出来ます。

 

 

 

 

 

 

住吉大社には、この懸魚をモチーフにした「魔除守」や、実際に本宮に使われていた銅板の古材を使用した「楯懸魚銅板守」があります。

楯懸魚銅板守(たてげぎょどうばんまもり)            画像引用元:住吉大社

住吉大社のお守りについては、当サイトの以下のページ↓でご紹介しています!
 住吉大社(大阪)のお守りの「種類・効果(ご利益)・初穂料(値段)・授与場所(販売場所)・通販・返納について」

社殿の色

柱は朱(丹)塗り、板壁は白色の胡粉 (ごふん) 塗りです。

色彩は丹と白と黒が中心と簡素ですが、建物全体の雰囲気に合っています。

黄金の金具により、さらに鮮やかな色彩美を作り出しています。

住吉大社・本宮(本殿)と「幣殿・渡殿」【重要文化財】

ここまで、住吉大社の本殿の特徴をご紹介してきましたが、このような疑問を持たれた方もいらっしゃることでしょう。

「住吉大社の本殿の正面に、別の建物がある・・!?」

その通りです!

住吉造の本殿の特徴ばかりをご説明してきましたが、住吉大社の本殿には、もう1つ重要な特徴があります。

それは、社殿の前に「渡殿(わたりでん)」を挟んで「幣殿(へいでん)」が接続しているという点です。

横幅のある幣殿が立ちはだかっているため、正面から見ると住吉造の建物のように見えないのですが、横や後ろから見れば、れっきとした住吉造の社殿であることがわかります。

一般の参拝者は、賽銭箱がある幣殿前で拝礼することになります。

第三本宮の拝殿内部

当ページでは、本殿について「本宮(本殿)」と表記していますが、厳密には、「本殿」と呼ぶ場合は、幣殿と渡殿を含まない後ろの建物のみを指し、「本宮」「本社」と呼ぶ場合には、幣殿から本殿までを含んだ1つのまとまりを指していることが多いようです。

なお、昇殿参拝(祈祷)を申し込めば、本殿に上がることもできます。

住吉大社の御祈祷・御祈願については、当サイト住吉大社(大阪)の「拝観時間(開門時間・閉門時間)・拝観料(入場料)・祈祷/祈願(お祓い)の受付時間と初穂料(料金)・アクセス・駐車場など」でご紹介しています。

住吉大社・本宮(本殿)の配置について

本殿が向いている方角にも特徴があります。

本殿はすべて西(大阪湾)向きで、第一本宮から第三本宮までは直列、第四本宮と第三本宮は並列に配置され、全国的にもたいへん珍しい建築配置となっています。

この配置は本宮のご祭神が海中より生まれた神様をお祀りしていることから、4棟は全て海に向かって西向きに建ち、連なってお祀りされているその姿は、大海原を行く船団を表しているとも言われています。

住吉大社・本宮(本殿)の御祭神

住吉大社の各本宮(本殿)には、以下の4柱の神が、それぞれ祀られています。

  • 第一本宮:底筒男命(そこつつのおのみこと)
  • 第二本宮:中筒男命(なかつつのおのみこと)
  • 第三本宮:表筒男命(うわつつのおのみこと)
  • 第四本宮:神功皇后(じんぐうこうごう)(息長足姫命(おきながたらしひめのみこと))

住吉大社の御祭神のご利益(ご神徳)

住吉三神には、航海安全や農耕、産業に関するご利益、神功皇后には、安産や勝負運に関するご利益などがあるとされています。

住吉大社の本宮(本殿)に祀られる御祭神とそのご利益について詳しくは、当サイトの以下のページ↓でご紹介しています!
住吉大社の御祭神「住吉大神」とそのご利益を徹底解説!

住吉大社で受けられる祈願(祈祷)については、以下のページ↓をご覧ください!
住吉大社(大阪)の「拝観時間(開門時間・閉門時間)・拝観料(入場料)・祈祷/祈願(お祓い)の受付時間と初穂料(料金)・アクセス・駐車場など」

住吉大社・本宮(本殿)の正式な参拝の仕方・順番

4つの社殿があると、回り方が気になるところですが、住吉大社では、特に正式な参拝順序は決まっていないということです。

各本宮の前では、二礼(拝)・二拍手・一礼(拝)の、一般的な拝礼を行います。

住吉大社・本宮(本殿)の場所

正面入り口の大鳥居を通り、渡るだけで「お祓い」になると言われている反橋を渡ります。

参道の端にある手水舎でお清めをしたら、正面には第三本宮、右手に第四本宮が鎮座しています。

第三本宮と第四本宮の間を抜けて見えてくるのが第二本宮です。

そして、その奥に鎮座しているのが第一宮本宮です。

※住吉大社の境内図(全体)はコチラからダウンロードできます。

スポンサードリンク -Sponsored Link-


当サイトの内容には一部、専門性のある掲載がありますが、これらは信頼できる情報源を複数参照して掲載しているつもりです。 また、閲覧者様に予告なく内容を変更することがありますのでご了承下さい。